2020/08/10
組合に加入して要求前進しました-メガバンク勤務の派遣社員
先月号でご紹介した、メガバンクに派遣されている大阪の女性労働者Mさんが、金融ユニオンに加入して精力的に団体交渉を行う中で、次々に要求が前進し始めています。
- ●時給アップ、勤務時間も正社員並みに
時給1400円+クレジットカード獲得1件につき500円などのインセンティブ付きの給与を、新たにキャッシュレス機器の設置提案業務も加わることでインセンティブなしの時給1800円に改善。これまでシャッターの上がっている9時~15時の休憩を除く5時間だった労働時間が、8時40分~17時10分の7時間30分と、正社員並みになったため、時給の引き上げと相まって大きく増収となる見込みです。 - ●実質「日雇い派遣」も改善
リーマン・ショックの影響で2008年末に発生した年越し派遣村などによって派遣労働者の雇用を守るための法改正が行われました。
Mさんたち派遣労働者は、そこで禁止されたはずの「日雇い派遣」ぎりぎりの31日契約の超短期雇用契約を派遣先の銀行の都合で、強いられています。
新業務は8月から開始予定で、派遣先の銀行が「派遣労働者の新業務への適性判断のため」として31日契約に固執していました。派遣元としても組合主張を入れて銀行と交渉を重ね「他の派遣会社がとりあえず新業務は31契約としているからMさんについて8月からの契約期間31日後の次回契約を11月末までとし、他社からの全派遣労働者にも適用する」と実質4ヶ月に改善できました。
組合が「今どき非常識すぎる」「法の趣旨を尊重せよ」と強く申し入れた結果、Mさんだけでなく、同一労働の他社の派遣労働者に適用拡大できたことは大きな成果です。
組合は、同一業務3年を経験しているMさんの派遣先への直接雇用や、派遣元での無期雇用転換の前倒しを求めています。 - ●コロナ問題の派遣労働者対応の「不十分さ」認める
派遣先の銀行職場では、派遣労働者に職場感染者の情報提供の不十分さや、フェイスシールドなど感染予防用品の支給差別も生まれていたため、組合が「正社員と派遣社員の命にまで差別を持ち込むもの」と厳しく改善を求め、会社も「不適切な対応」を認めました。
派遣労働者の問題で常に痛感させられるのが、派遣元とその「お客様」にあたる派遣先の力関係の差です。
労働組合との交渉で、派遣元が「それはひどい」と思っても、派遣先の銀行に「改善をお願いする」しかできないということです。
実質上の雇用主に対して労働組合の力が届き難いように労働者派遣制度が「悪の黒幕」を守ってやっているとしか思えません。
ちょうど、今放映されているTVドラマ「半沢直樹」での「東京中央銀行」と子会社「東京セントラル証券」の関係を思っていただければ、よくわかると思います。 - ●本人の頑張りが組合の仲間を激励
組合加入通告、二度にわたる団体交渉などに常に本人が参加し、職場状況や他の職場の情報なども具体的に示して問題点を浮き彫りにする姿は、組合役員からも絶賛されています。
その背景には、あちこち派遣されてきた職場の人たちとの信頼関係の構築や、仕事に対して誠実に向き合う姿勢があるように思われます。
本人の頑張りが、いつのまにか応援しているはずの私たちを激励してくれていることに気付かされています。