2020/10/20

点検「在宅勤務」メリットばかり強調されるけれど…

 コロナ感染拡大を受けて労働者にも「新しい働き方のスタイル」が求められるようになり、その代表的存在となっているのが「テレワーク」と称する在宅勤務です。

 職場に出勤せずに、自宅や自宅近くのサテライトオフィスなどで仕事をする働き方で、育児や介護との両立、通勤の負担からの解放などの利点ばかりが強調されていますが、果たして、そうでしょうか?

 金融ユニオンでは、10月3日に行われた第1回中央執行委員会で「在宅勤務」問題について時間をかけて突っ込んだ討議を行いました。

 金融ユニオン組合員からの報告によると、在宅勤務が実際には育児や介護が終了した深夜の仕事になることも多く、労働者本人の健康にも悪影響を及ぼしている例もあります。

● 厚労省は

 厚生労働省は、在宅勤務の導入について就業規則などに定めるように指摘しています。

 休憩時間のとり方をはじめ、育児や家事などで業務中断を認める場合のルール、長時間労働の防止対策、通信機器や通信・光熱費の負担などについて労使で協議して定めておくよう呼びかけています。

 在宅勤務でも通常の労働時間規制(1日8時間、週40時間)が適用されることには変わりありません。残業代や深夜・休日手当も支払う義務があります。労災事故も通常の労働者と同じく労災保険が適用されます。

 在宅勤務によって生じる電気代など個人負担部分について金融機関が補償している例はほとんど見られないようですが、自治体などでは補償例もあります。

 三菱UFJ銀行では、在宅勤務の有無にかかわらず、従来、月9千円だった昼食手当が1日勤務に付き5百円に変更されました。「みんなが在宅勤務ができるようになった」ことをその理由としています。

● パワハラ被害から解放

 あおぞら銀行で、新加入したIさんは、コロナ禍で在宅勤務となって「パワハラ加害者の上司の顔を見ないで仕事ができ助かっている」と歓迎しているひとりです。

 北陸銀行の二人で仕事をやっている部門では、ひとりが一週間ずつ在宅勤務を交代して行っています。

在宅勤務をまだまだ「本部の一部に限られた働き方」という認識の人が多いようですが、実際には支店勤務でも「いろいろなコンテンツを見る」作業や、コロナ禍での対面回避志向の顧客との在宅での対面営業が推進されているなど、現場感覚とのずれが生じているように思われます。

● 申告しにくい残業代

 在宅勤務では上司のいない中で働くので労働時間管理が一番の問題です。

 在宅勤務でも、使用者は全ての労働者の労働時間について適正に把握する義務があります。

 始業時・終業時に労働者からメールや電話で連絡させる企業が多く、ネットで勤怠管理をしている場合は特別の対策がいらないケースもあります。仕事内容についても終業時に報告させるなどの方法をとって確認している企業も少なくありません。

 生活時間と労働時間の区別があいまいになり、時間外・休日労働をしたにもかかわらず、6割以上の人が「申告していない」と答えるなど、逆に長時間労働を招いたり、「お家時間」の増加で、家族間の諍いや家庭内暴力が多発するなど、「新しい生活様式」にも関わる問題も内包しています。

 セキュリティーへの不安や、自宅にパソコンを保有していない「IT弱者」にも、いじめにつながるような対応がされているケースも見られ、労働組合として決して無視できません。きちんとした労働時間管理と労使によるルールの明確化が求められています。

● 人間らしく働くルールを

 経団連がコロナ危機を「働き方を変えていく契機」と主張していることは要注意です。経団連はこれまで「残業代ゼロ制度」の導入を政府に働きかけて実現し、さらに「柔軟な働き方」の名で労働法制の規制緩和を狙っています。ウイルス感染症に強い社会をつくるために必要なことは大企業の利潤拡大を目的とする「生産性向上」ではなく、「人間らしく働く」ルールの確立です。

 北陸支部では在宅勤務についての経営側の考え方を団体交渉で問いただしていく予定にしています。


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