2021/07/20
大変だけど頑張る裁判官-お勧めの1冊
6月で終了しましたが、テレビの春ドラの中で1位の「ドラゴン桜2」に続いて、堂々の2位の視聴率を獲得した竹野内豊・黒木華主演の爽快裁判官ドラマ「イチケイのカラス」を毎回、楽しみにしていました。
東京地方裁判所第3支部第1刑事部の通称「イチケイ」は、有罪率99・9%と言われる日本の刑事裁判において30件余りの無罪判決に関わっている伝説の裁判官を部長に、事件に関わっている全ての人たちにとって最も良い判決をめざし、裁判所の職権を発動して丁寧な調査を進めていくことの大切さを私たちに教えてくれます。
政治権力が裁判所に信じられないような圧力・脅しをかけてきても突っぱねて巨悪を容赦しない姿は、かつての「半沢直樹」を思い出しました。
刑事と民事の違いはありますが、このドラマを実際に再現したかのような裁判官の樋口英明裁判官が「私が原発を止めた理由」という本を出版されました。
樋口裁判長は、2014年5月、福井地裁裁判長として、関西電力大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じる、あの有名な判決を出しました。
この本の中で、樋口裁判長は東電が地震記録を残したくない理由も浮き彫りにしています。
樋口裁判官は、武生信金で経営者の不正融資の実態を公益通報した労働者2人への報復的懲戒解雇裁判を最初のうち担当し、引き延ばし兵糧攻め戦術の信金側を厳しく戒めたりしたシーンが印象に残っています。
案の定、原発差し止めの仮処分決定を出した樋口裁判官は、時の原発推進政府の強烈な圧力で、家庭裁判所などに異動させられ、4年前に定年退官して以降、全国で講演活動を続けています。
「三権分立」であるにもかかわらず、出世のために、時の政権の顔色ばかりうかがう「ヒラメ裁判官」が目に付く中で、頑張る裁判官を久しぶりに見つけました。
(T)
- 『大変だけど頑張る裁判官』
- 出版社:旬報社
- 価格:1,430円