2023/07/10
久々の賃上げ実現も… 金融ユニオンの23春闘
23春闘は、既に「国民的合意」にまでなっていた賃上げ待望論の追い風状況であったにもかかわらず、賃金の底上げとなるベア回答は未だ一部にとどまり、物価上昇率水準をカバーできる金額には及ばず、「臨時」「特別」など例外的な名目での暫定一時金の実施にとどまっています。
メガバンクの三菱UFJ銀行は、3月27日に「基礎年収を前年比プラス2.7%引き上げ(前年は1%)。
2.7%賃上げとは別に一般行員の役付者9千円、非役付者6千円、専任行員5千5百円引き上げ。嘱託契約社員は個々の給与水準に応じてベースアップと同等の割合で引き上げということで4千円程度の引き上げ。契約社員フルタイム労働者の時給をプラス40円、パートタイム労働者の時給はプラス30円」という賃上げ回答を行いました。
さらに特別一時金の支給ということで、「変革挑戦支援金」として一般行員10万円、専任行員6万円、嘱託契約社員4万円、契約社員フルタイム2万円、パートタイム1万円の雇用形態別格差支給を5月に実施しました。
また、東京・名古屋・大阪などで取り組んだ三菱UFJ銀行員向けの格差是正宣伝は、共感をもって受け止められました。
その一方で、ベースアップ実施時期が7月から9月に一方的改悪されるなど、春闘の形骸化・空洞化がメガバンクトップでも進んでいます。
滋賀銀行では、一律3万円の賃上げ要求に対して、回答は平均12,020円、初任給は1万5千円~1万7千円の引き上げ回答が出されたことに対して、金融労連加盟の滋賀従組は、一定の評価を行いました。
しかしながら、ここでも賃上げ実施日を「人事考課反映の職務手当実施日に合わせたい」という銀行の理由でこれまでの「4月1日」から「7月1日」へ改悪するなど、28年間ベアなしで4月からの賃金改定の原則を職場の労働者の多くが知らないことに付け込んで改悪したり、初任給引き上げも年間賃金としては、わずか9千円の増加に過ぎないなど、労使の信頼関係破壊につながる姑息な手法が表面化しました。
従組はこのことに抗議し、4月1日実施でかんばっている所へのエールの意味も込めて、夏期臨給闘争を継続するなど「たたかう労働組合の原点」に立ち返った積極的な取り組みを行いました。
大阪シティ信金では、全労働者を対象に一律ベア5千円を含めた平均12,037円(3.28%)の賃上げとそれが反映された夏期臨給(平均612,117円)が支給されています。
いずれも諸外国では、毎年実施されている水準の賃上げが、日本では物価高騰の今年度にようやく行われた結果となっているため、食料品・水道光熱費を中心とした急激な物価上昇による家計圧迫・生活困窮には対応できていきせん。
宮城第一信金では十数年ぶりとなる賃上げ(ベースアップ)回答が、人材確保、大卒新入職員の募集に支障を来たさないようにという意味合いも含め、大卒初任給が4千円アップ、逆転現象を生じさせないために、段階的に年齢に応じて昇給を行い、最低が9百円というところまで基本給の増額が実施されました。
さらに3月30日にはパートを含む全職員に一律5万円が支給されました。金庫は「次年度にむけて頑張っていただきたい」と説明しているようですが、事業計画を超える利益の計上見込みであり、物価高騰に苦しむ職員への実質上の「期末臨給」と言えます。
休暇面でも今年度から「プレシャス休暇」が導入され、9連休(土日含めて)の取得促進を制度化しています。内訳は特別休暇の付与が3日間と年次有給休暇2日間を併せて9連休という制度ですが、若年層の退職に何とか歯止めをかける狙いが込められているようです。
静岡銀行では、金融ユニオンの統一要求基準に基づく賃上げと4ヶ月分の上期臨給等の要求書を3月14日に提出し、特に今回、6項目に絞った諸要求は以下のとおりです。
- ①行員に一人一台のパソコンまたはタブレット貸与すること。
- ②4割近くにも達する管理監督者の範囲の見直し。
- ③パワハラの根絶。
- ④非正規と正行員との格差是正。
- ⑤マイナンバーカードの保険証の廃止・有料化を行わないこと。
- ⑥各種手数料の新設・引上げを行わないこと
利用者の声も掲げて交渉を行いました。